2011年6月29日水曜日

節電・オフピーク騒動・・・その続き

 世に流布する節電の間違いとオフピークの意味についての、一つ前のエントリーが随分と多くの方に御覧頂いたようで誠に有り難い限り。おそらく皆さんが現在の節電騒動に疑問を感じておいでだったのだろうと勝手に想像をしている。
その後情報を頂いたり、悩ましい事例を見るようになったのでここで追加をしてゆきたい。
節電で公園の水遊びストップ 県内公園、せせらぎ、噴水中止続く(下野新聞)

夏場の電力不足対策として、宇都宮市は管理する15カ所の公園で、水遊びができる人工のせせらぎや噴水を今秋まで中止することを決めた。水の循環やポンプでくみ上げる時の電力使用に配慮した。栃木市内の一部の公園でも、停止や稼働時間を短縮して対応。例年、涼を求める親子連れでにぎわう夏の光景は「節電」で様変わりしている。
噴水のポンプというのはいったいどの程度の電力を食うのか知らないけれど、子供や家族連れが楽しむ公園の水辺の風景を役所の判断で奪わねばならぬほどの切迫した節電なのかとは思ってしまう内容。
他の方からも、「止めやすいところを止めているのでは」という指摘。多分その通りだろう。
確かに街中で目立つ所にあるものを止めるというのは一種のショック療法的ではある。市民に対して精神論に訴えるには公園の噴水を止めるのは効果的なのだろうが、この電力危機は精神論で乗り越えられるほど生易しいものでもない。節電の名の下に、市民のささやかな楽しみを奪うのは得策ではなく、あくまで合理的に判断してゆかねばならない。
・・・噴水のポンプの電力量が分かったら、その分を宇都宮市役所のどこかで節電するくらいはたやすいことだろうと思うのだが。

また別な切り口で、面白い対応も。
「残業部屋」設置で節電へ(NHK)  
夏場の電力不足に備えて、千葉県東金市の市役所は、残業する職員を1か所に集める「残業部屋」を設けて、無駄な電力消費を抑えようという取り組みを進めています。

これは記事を見て流石に「あっぱれ」と思ってしまった内容。勿論これではオフピークには効果はないものの、夕方以降の節電についてはかなりの効果があるだろうし、役所としては残業の減少にもかなり強烈なプレッシャーになる。ある人はツイッター上で「なんか居残り補習みたいで、切ないですね」とコメントしていたが少々侘しい感じも醸し出す。

節電の活動は、悲壮感与える内容ではなかなか賛同は得られない。関係する人々が「にやり」としてしまうような出来方の巧さが必要なのだと思う。つらいからこそ、ちょっとした楽しみとともに節電に取り組めるといいのだが、そういう仕組みづくりが一番苦手なのもお役所の宿命かも知れぬ。

そして現在の大きな問題としてあるのがこれ。
熱中症搬送は前年の5倍超 6月の1週間、消防庁速報値(共同) 
熱中症のため6月20日から26日にかけて病院へ搬送された人は全国で2996人に上ったことが総務省消防庁の速報値で28日分かった。先週の猛暑が原因で、前年同期の5・3倍に当たり、わずか1週間で昨年6月の搬送者数(2276人)を上回った。搬送直後に死亡した人は7人だった。
確実に言えることは、熱中症での犠牲は避けられうる犠牲だということ。ただ、自治体や地域での間違った節電の啓発は、善意で進められるゆえに否定しずらいものでもあり、さらに踏み込んで言えばこれほど罪深いものもない。合理的で科学的な根拠に基づいた施策の展開と、地域的な弱者をどう支援するかを再度自治体には検討をしてもらいたいと願う限り。

2011年6月27日月曜日

間違った節電、正しいオフピーク・・・自治体施策の混乱を見て

世は節電。
どうもこのところ猫も杓子も節電流行りとなっているが、そんな中でこんなお知らせが流れてきた。
7月から9月の区施設の利用について(目黒区)
国が掲げる最大消費電力の削減目標は、企業・家庭ともに一律15パーセントとなっています。区では、夏期の節電対策として、電力需要のピーク時間帯となる午後の時間を中心に、エアコンや照明による電力使用量を削減するため、乳幼児や高齢者を対象とした施設を除く区施設の午後の利用を中止します。
おそらく目黒区には真面目なお役人がいるのだろう。
これをやれば、役所としての電力使用量はかなり減らせる。
しかし自治体としての立場からみると大間違いでもある。
乳幼児高齢者への配慮がみられることから内部でも何らかの検討をしたのだろう。
とはいえ公共施設をある時間閉じるというのは感心しない。

岐阜でも、数日前にこういうニュースが流れた。
サマータイム:8月に池田町が導入 本庁舎などで30分繰り上げ(毎日新聞)
池田町は8月の1カ月間、サマータイムを導入する。本庁舎、教育委員会事務局、保健センター、社会福祉協議会の4カ所で業務を30分繰り上げ、午前8時始業、午後5時終業とする。
産総研も示したように、サマータイムそれ自体には今回の電力危機への効果はない。
その点ではかなり残念な政策でもある。
精神論だとしても、精神論でエネルギー問題を乗り越えようとするのはなかなか難しい。
電力会社も地方自治体も、節電とは言うがなかなかそのコアな課題は説明していない。
問題は電力供給の逼迫する平日午後の早い時間であり、そこで電力使用を抑えれば問題は解決するわけで、業界的にはこれを「オフピーク」と呼ぶ。
これは電車の混雑とか高速道路などでも使われる用語ですな。

何より、世間が節電とこのオフピークを区別せずむやみに電気を使わぬよう告知していることが各所に悪影響を及ぼしている。
真夏の暑い時期、お昼から夕方までの数時間の電力消費を抑えればいいのであって、朝晩や夜中に必要なものまで絞って我慢をすることはない。
むしろ心配しているのはこういう間違った節電が広がることでの乳幼児や高齢者の熱射病などが増えることである。
これで死者が出るようなことになると、これこそ明らかな人災でもある。

こう唸っていたところ、別の自治体では異なるアプローチを発見する。

あらかわ街なか避暑地を実施します(荒川区)
国は、計画停電を特別区では実施しないこととしましたが、電力の供給は依然として見通しが立たっていません。また、夏の暑さで、熱中症にかかってしまう危険もあります。このため、区は、節電を徹底しつつ、特に多くの区民の方々が今夏を健康に過ごせるような対策として「あらかわ街なか避暑地」を実施します。
「あらかわ街なか避暑地」は、ご家庭でのエアコンを止めて公共施設をご利用いただくことで、区全体として節電効果を向上させるとともに、併せて熱中症対策を図るものです。
・・・荒川区、よく頑張ってます(涙。
そう、むやみな節電というのは地域には百害あって一利なし。
地域的に弱者がどうこの節電を乗り切るかを考えてもらいたかった。
その点では公共施設を開放してゆく荒川区の方向は明らかに正しい。

そしてさらに一歩踏み込んだのがココ。
節電避暑地:エアコン切って街に出よう 市川市が認定、官民施設開放(毎日新聞)
市川市は今夏、日中の家庭の節電を促すため、公共施設や民間商業施設を「節電避暑地」に認定し、「涼」を求める市民に開放するキャンペーンを実施する。福島第1原発事故に伴う電力不足の備えと、商店街の活性化を狙った県内初の試み。
自治体としてはほぼ満点の施策といってよい内容。
市川市にはこれは是非とも視察に行かねばならぬと思わせる出来。

実は私もTwitterで、同様のツイートをしており。
@assamtea
いまお家でエアコンつけてる方は、エアコン切って近所のカフェ行ってお茶するだけでも電力消費の削減と紅茶による救済の両方を得られますよ。紅茶党。
お国の一大事であることは確かなわけで、でもやせ我慢は禁物でもあります。
今年の電力危機は、間違った節電と正しいオフピークがあるということは覚えておいて欲しいもの。
そして、必要なところにはお昼であっても電気は使うべきであること。
さらに、その状況は理解しておきつつ自分の負荷を減らしつつこの暑さを乗り切って生活を愉しむことは視野に入れておくのがいいとも思う次第。