2013年11月25日月曜日

ゆるキャラグランプリ2013雑感と、「ゆるキャラのやめ方」について

 ゆるキャラグランプリ2013が昨日11月24日終了した。栃木県佐野市の「さのまる」が1位、浜松市の「出世大名家康くん」が2位、群馬県の「ぐんまちゃん」が3位という順で、1580体の参加し、地域振興関係者のみならず社会を大きく巻き込んだ一大ゆるキャラコンペティションが幕を閉じたことと成る。

 この夏、私は委託を受けて栃木県小山市の地域ブランドについての調査分析を学生とともに行った。その中で小山市の「おやまくま」は44位。ギリギリまで自治体の別キャラクターもエントリーをする可能性があるという事前の混乱を知る者としては、今回の調整や地域的な展開を見るに、十分な善戦と理解した。「おやまくま」は地域社会での認知度と好感度は圧倒的である。ゆるキャラに限らず地域資源のプロモーションなどこれまであまり上手ではなかった「うぶ」な小山市であり、これからもきちんとやればもっと面白いことに成るだろうというのは想像ができる。


 当初から順位を競っていた栃木県のキャラ「とちまる」46位を振りきったのは評価していいだろうが、広域自治体のゆるキャラがどういう狙いでこういうコンペに出るのかは、地域的にはもっと考えてゆく必要がある。相互に何を狙っていて立候補しているのか、広域自治体がどうしてゆるキャラを使うのかなど裏側にはいろいろ課題が見えてくる。要は、潰し合いを地域内で行うことに成るのはできるだけ避けなければならなかったのだが。単なる対立ではなく、広域自治体が中心となり相互に場を盛り上げるような仕掛けは準備できなかったものだろうか。


 そして小山市の隣の隣、栃木県佐野市の「さのまる」1位は立派。地元の方々が長く時間を掛けて準備し順位を上げてゆくことに成功したのは敬意を表する。しかし、これが何らかの地域的実需に繋がっているかどうかは精査してゆく必要もある。経済は、地域振興はさのまるの知名度アップにより変わったのか、と問われると結構厳しいのではとも思ってしまう。ゆるキャラはこれからその目的と、実際の効果が以前よりも厳しく求められてゆくことになるだろう。

 「さのまる」に競り負けた浜松の「出世大名家康くん」の状況も興味ある部分である。当初は独走に近い形だったが、コンペ期間中の地域的な混乱の報道がネットニュースで出たりというのは、実情分からぬ者は口を出せぬが、浜松の皆さんがこの結果をどう見ているのかは気になるところ。お役所の旗振りでゆるキャラが全国区になるというのはそろそろ限界でもあり、最初の種を地域社会が総出でどうやって芽を出させ葉をつけ花となるか、そこまでやらねば果実は得られない段階に差し掛かっている。

 ゆるキャラ、B級グルメについてはそろそろブームが過ぎつつあるというのが私の理解である。都市戦略の観点でこれらをどう使いこなして都市の魅力、地域資源として実際の経済などに組み込めるかが問われてくることになると考えている。ゆるキャラ、B級グルメという「仕掛け」を組み立て創意工夫しながら活用する手法の開発や能力がその自治体や地域社会のあるかどうかが見分けられるのがこの「ゆるキャラグランプリ」なのだと考えると分かりやすい。


 その点ではここ数年は「やってみよう!」と思って自治体や地域の中で着手できる幸せな時期だったのかも知れない。おそらくそういう発想や余力のある地域はすでに参加済みであろう。この経験を踏まえ、次の一手をどう進め構築してゆくかこそが、これからの関係機関が本当にすべきことでもある。


 そして、今後の課題の一つは「ゆるキャラのやめ方」である。ゆるキャラを作ったはいいが、使いこなすことも活かすことも出来ずお蔵入りすることもかなわぬ全国のキャラクターが多数ある。それらをどうするか、というところが少なからぬ自治体などででてくるはずである。ゆるキャラの出来が悪いのか、それをマネジメントする自治体や関係機関の能力が足りないのか。どちらなのかは敢えて踏み込まぬが、現在ゆるキャラを展開する中でそれをどう収束し、勇気ある撤退を決断しその存在を過去のものにするがいいか、私はいま手法開発も含め、そんなことを考えている。


 一部のエリートゆるキャラを除けば、都市・地域としての戦略に組み込まれぬ凡庸なゆるキャラ群は、徐々に消えてゆかざるをえない、それがこの激烈な競争に乗ったがゆえの結果でもある。各地のゆるキャラの現況調査や支援はしばらく続けてみたい。